2024年9月10日火曜日

心を青くするということについて

 

心を青くするということについて

 「自然治癒力について」で心を青くすれば自然治癒力は高まると書いたが、最後に心を青くするとはどういうことかということについて詳細を述べようと思う。

 統合失調症の急性期には誰もが心を恐怖感に支配されるし、陰性症状においては心が真っ黒な絶望感でいっぱいになる。またそのような恐怖感や絶望感に支配されている時は心に極度の緊張感が張りつめている。

 そういう時は他人に人間的好意など抱ける余裕などなく、疑心暗鬼になり他人の好意を拒絶してしまうので自分の性格が悪くなったように感じてしまうものである。もう自分の心の中の大慈悲(無差別愛)の炎は恐怖感や絶望感により吹き消されてしまったように感じられ、それがより自分を心細い寒々とした気持ちにさせ、そのことによってより恐怖感や絶望感を強く感じてしまうようになる。

 そういう時どうすればいいかというと心を青くすればいいのである。極度の恐怖感や絶望感を感じている時、無意識下の大慈悲(無差別愛)という温かい陽の感情は陰に転じて大智という静清な知性に変わってるので、そういう時はともかく自分の中に感情的温かみを求めるのではなく、ともかく自分の生き地獄的な今の状況からの脱出方法を冷静に真面目に考えて考えて考え続ければ、無意識下の大智が青く輝き始め、心が青くなる。つまり心を青くするとは絶体絶命のピンチや絶望的状況において取り乱さず、真面目に冷静にその状況下において脱出口を考えることをいう。絶体絶命のピンチや絶望的状況において人は自暴自棄になったり、錯乱したりしたくなるものだがそういう醜い感情をあくまで知性で押さえつけて、冷静になるということでもある。

 心が青くなれば心の中に張りつめていた極度の緊張がゆるみ、心の中の恐怖感や絶望感を客観視できるようになる。心の中の恐怖感や絶望感を客観視できさえすれば、想像力によって強化された恐怖心や絶望感は一気に相対化され縮小されるので、恐怖感や絶望感をほとんど克服でき、より正気に戻りより真面目に冷静に考えられるようになるという好循環に入る。

 

 大智とはどういうものかと、もう少し詳しく知りたい方もいると思うのでちょっと説明しておく。大智とは仏教では大慈悲を知性化したものだと言われている。私自身は圧倒的恐怖感や絶望感の中で真面目に冷静に自分の身の回りの状況と自分自身の状況を考えること自体を大智だと基本的に考えている。(ちなみに圧倒的恐怖感や絶望感の中で大慈悲を意志化したものが捨て身の心、捨て身の覚悟というものであると私は思っている。)

また大智はあくまで知性であり大慈や大悲とちがい感情ではないので大智を意識上に浮かび上がらせることによってなんらかの悟り体験というものを得られるものではないと私は思っている。少なくとも私は大智を神秘体験を伴う悟りとして得たという告白のある書物を読んだことはない。)無意識下の大慈悲という感情が意識上に共同体感覚や他人への友愛の心を作るように、無意識下の大智という知性は意識上に美意識というものを作る。そして美意識と捨て身の心が逆境下においても人に美しく生きようとさせ、または美しく死のうとさせる気力を生み出す。

全く脱出口のない所に追いつめられたような逆境下において心を青くして真面目に冷静に考えると一般的にどういう解決策を見つけ出すかというと、統合失調についていえばもう統合失調症という障害を持った自分にとっては美しく生きるために、または美しく死ぬために害にしかならない小我の欲望やつまらない執着、虚栄心などをできるかぎり意識的にとりあえず当面の間刈り込んで身軽になろうという解決策に行きつくはずである。そして実際自分にとってどうしても大切な中核部分以外の自分を刈り込むことにより自分自身が人間として素朴になり、そのことにより自分をセルフコントロールしやすくなり、再び心に余裕が持てるようになる。そうすると周囲の人間の自分への対応が変わり、世界の局面が変わる。世界の局面が変わると生き地獄からの脱出口が見つかり、生き地獄から脱出できるようになるというのが一般的解決策といえる。

確かに上記の通りすればすべての統合失調症患者にとって必ず100%周囲の人々や周囲の状況がいい方向に変わり、すべての統合失調症患者が生き地獄から脱出できるようになるとは私自身も断言はできないが、基本的に心を青くすれば、人間として素朴になり、人生をまたセルフコントロールできるようになるので、そのことによりある程度逆境下においても心に余裕が持てエレガントに生きられるようになるということは100%確実に言えると私は考えている。

結局統合失調症患者にとってエレガントに生き、エレガントに死ぬこと自体がゴールなのであり、エレガントに生きるということは統合失調症を発症してしまったという自分の不幸を美しく思える心を持てるかどうかなのである。つまり圧倒的恐怖感や絶望感の中でも大智を輝かし真面目に冷静に考えると、必ず自分の不幸な人生を美しく思えるくらいの心の余裕を持てるようになれ、エレガントに生き、またはエレガントに死ねるので統合失調症患者にとっては心を青くしようと思うことはやはり最重要なことなのである。

 

 

 補足

しかし統合失調症の回復期前期において一度完全に絶望することは、私は非常にいいことだと思っている。一度完全に絶望しなければ、どうしても人並みに幸せになりたいという執着を捨てられず、心を青くすること、諦念を持つことはできないからである。

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