まずはじめにデフレを解消するための最大のキーワードとなる談合、話し合いという言葉について詳細に分析してみよう。談合という言葉は現代経済においては悪事を話し合うことという意味があるが、それはなぜかというと談合という言葉から人は公正な談合(悪い談合)というものを想像してしまうからである。
公正な競争とは各自が被害者意識に凝り固まり、利己的になって自分の短期的利を最大化しようと思い競争することを意味するように、公正な談合とは各自が被害者意識に凝り固まり、自分の利を最大化しようと思って話し合いをすることを意味する。つまり悪意を持って仲間内だけで話し合って仲間以外のものでもある社会の富、全体の利、公的な富を自分たちの私有に帰さしめようとすることが経済学的な意味での公正な談合だから民衆は談合を憎むわけである。公正さという徳または経済学が本質的に全ての人の悪意を前提とし、弱肉強食というルールを最大の暗黙の前提とするのであるからそう考えてしまうことはある意味致し方ないことかもしれない。
だが、ここで話す談合とは公正な談合ではなく中庸な談合(良い談合)、つまり勝とうと思わずみんなで幸せになろうと話し合うこと、自分たちの子供たちのために幸せな社会を作ろうと話し合うことである。具体的に言えば全体の長期的利を最大化しようと話し合うこと、またはどのようなセーフティーネットを張ればデフレ下でもみんなが安心してつぶしあいをやめてホワイトな労働環境で社会経済に良い競争、切磋琢磨をすることができるのかということについての話し合いである。つまり全ての人の善意を想定し、共存共栄というルールが暗黙の前提ルールとして認めたうえでの話し合いである。
中庸な談合、よい話し合いをするためにはゆとりある社会に住んでいるが必要である。ゆとりのある社会とはどんな社会かというと共同体感覚(仲間意識)と自尊心と切磋琢磨がある社会である。なぜ切磋琢磨という競争がゆとりある社会に必要であるのか疑問に思う人がいるかもしれないが、切磋琢磨という自主的、積極的に行うよい緊張の後にだけ中庸な談合のできるよいゆとりを社会の中に生むことができるからで、切磋琢磨という競争はゆとりある社会を作るために必要不可欠なものなのである。
共同体感覚を持った人間とはつまるところ、お互い様です(おもいやり)、と素直に言える人のことだし、自尊心のある人とは要するに自分の良心の判断を大切にする人、つまり勇気のある人のことだし、切磋琢磨ができる人とはおかげ様です(知足、謙虚)、と素直に言える人のことだが、そう言ってしまうと身も蓋もないので詳しく分析しよう。
まずはじめに言っておきたいことだが、インフレ下、つまり全体のパイが大きくなるとき、人手不足のときは人は自尊心を持って生きることや、切磋琢磨したり、連帯したり、共同体感覚を持って生きることは容易だが、デフレ下において、つまり全体のパイが縮小していくとき、人あまりの時においてはどうしても人は他人に対して攻撃的になり、自らの良心に反して損得勘定で行動したり、つぶしあいとしての競争をしたり、利己主義者になりやすいという認識を前提としてもっておきたい。しかしにもかかわらず、今我々はデフレ下においてどのようにすればゆとりある社会を築けるのかということについて考えているのである。
デフレ下の神の見えざる手が存在しない経済において中庸を愛するためには各々が積極的自主的にゆとりある社会を築こうと思い行動しなくてはならない。ゆとりある社会を築くためにはお互いに信頼することが必要条件だが、誰も人に他人を信頼するよう強制することはできないことが問題を難しくしている。
つまりゆとりある社会(中庸経済システム)に入会するためにはそれなりの資格がいるということである。他人を信頼できない人、信頼したくない人、つまり被害者意識に凝り固まり、自分が感じている屈辱感を機会があれば他人に味わせそうとしているような他人への敵意を捨てられない人、傲慢、横柄なフリーライダー、絶対に自分だけは幸せになりたいと強く執着している人はデフレ下でパイが縮小していく公正経済システムの中に留まるしかないともいえる。
共同体感覚を持つ前提条件としてはお互いの信頼関係が必要である。他人を信頼するためには、勇気がなければできない。「勇気を失うことはすべてを失うことである」、とゲーテが言っているがまことにその通りで臆病者は勇気がないから他人を信頼できず、他人を疑い、他人の悪意を確信してしまう。そしてその想定される悪意から身を守るために利己主義者にならざるを得ない。ゆえに臆病者は常に卑賤になのである。
現代社会が至上価値とする公正さという徳はできるだけ勇気を持たずとも快適に生きていけることを目指している徳とも言えるが、その公正さという徳が作った現代先進国の血も涙もない極悪非道の人非人がはびこる社会が反面教師として人間にとって勇気の大切さを雄弁に物語っている。
明日に続く
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