2019年5月16日木曜日

統合失調症完全克服マニュアル 4


 

ではいったいどういった心構えを持つと抗精神薬を平静に飲めるのかというと、「武士道とは死ぬことと見つけたり」という言葉が意味することを感得できたら抗精神薬を平静に飲むことができるようになる。どういうことかと自分の人生を、命を重要視しないで捨て身になって潔く生きていくべきであると確信すれば平静に薬を飲むことができるようになるということである。福沢諭吉の処世訓で「あまり人生を重くみず、何事も捨て身になって一心になすべし」というのがあるが、つまりそういうふうな生き方を身につけなければならないということである。死に対する恐怖、生きんとする意志を積極化すると人並みに幸せになりたいという執着が生じ、他人への一般的敵意という態度が生じるのと同様に、大慈悲、無差別愛、他者を尊重したいという意志を積極化すると親愛なる他者の幸せを祈りたい、他者を幸せにしたい、他者を不幸から救いたいという気持ちが生じ、その気持ちから自分の損得を考えず、他者のために生きたい、自分の命を、幸せを、人生を軽んじて捨て身という態度で生きていきたい、という自分自身に対する態度が生じる。

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「武士道とは死ぬことと見つけたり」という言葉を感得するのは極めて困難であるとこれを読んでいる統合失調症患者で思う人がいるかもしれない。確かに私も難しいとは思う。だがしかし、冷たいことを言うようだが、この言葉を感得できなければおそらくかなり高い確率で予後不良の廃人状態で地獄のような一生を送るしかないと今まで会ったすべての統合失調症患者を見て私としては 思うところである。どうしてもやるしかないのだ。どのようにすればそれを感得できるのかというと勇気を出して徹底的に抗精神薬を飲むべきか否かということについて自分の心に問いかけることである。自分の心に問いかけると聞いて良心の声に従うべきというのかと勘違いする人がいるかもしれないがそれはちがう。急性統合失調症状態で聞く良心の声、神の声と思う声は多くの場合、悪魔の声なのである、生きんとする意志の声なのである。自分が変わること、成熟することをかたくなに拒否して現在の自分を固守しようとする声なのである。だから良心の声と思われるものに耳をかたむけては絶対いけない。自分の心に問いかけるとはあくまで自分という意識、自我、理性に問いかけるということである。お釈迦様も自灯明が最も大切だと言っているし、禅宗でも自力本願こそ至高としている。最後の最後は自分の判断で人生を決めるべきなのだ。最後の最後、絶体絶命のピンチにあっては神にも良心にも頼らず、自分という思念の判断力を信じることが自灯明ということであり、自力本願ということなのである。

 抗精神薬を飲むべきか否か、ということを真剣に自分の心に問いかけ、心の声に耳をすませば必ず答えは出てくる。まず抗精神薬を飲むことは正しいことか否か、という判断基準で考えているうちはこの問題は解けない。基本的に統合失調症患者が抗精神薬を飲もうが飲むまいが世の中の人にとってはどうでもいいことであるし、一般的正義の観点からも抗精神薬を飲むべきまたは飲まぬべきという解答は絶対得られないからである。また直接的大慈悲の論理もこの問題については解答を与えてくれない。幻聴や幻覚に怯えているときに、他人に好意を持つことや他人を尊重したいという念を持つことはできないだろうし、たとえできたとしてもだいたい保護室の中では自分以外は職業としてそばにいる、つまり金銭目的でそばにいる看護師と医者にしか出会わないのであるから他人への好意や尊重の念を向けるべき他人がいないので、その他人の期待に応えようと思うこともない。ゆえに大慈悲という論理からもこの問題に解答は与えられないのである。

 抗精神薬を飲むべきか否か、ということをどういう判断基準で考えれば答えがでるかというと結論を言えば、精神的美的判断基準で考えれば答えがでるのである。抗精神薬を飲むことは少なくとも潔いのではないか、飲まないことは往生際が悪いことではないのか、ということについてじっくりと考えれば答えが出るのである。この薬を飲むと死んでしまう、という直感はあるいは正しいのかもしれない。だが、幻聴や幻覚に怯え、薬を飲むことからも逃げ回り、恐怖で心をいっぱいにしながら生きていくことは本当に正しいことなのであろうか? 肯定されるべきことなのであろうか? 美しいことなのであろうか? と真剣に考えることである。保護室の中では考える時間はたっぷりとあるはずだ。ゆっくりと1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月かけて考えてみよう。考えて、考えて、考えれば必ず最後には潔く薬を飲もう、潔く死のう、という結論に達するはずだ。それこそ「武士道とは死ぬこととみつけたり」ということなのである。諸君が勇気を持って考えれば、諸君の自我の持つ美意識、美的判断力が必ず諸君を救ってくれる。

 捨て身になって、自分の命を省みなくなった時から、自分が徐々に変わり始め、急性期から急速に抜け出ていく。また捨て身になればもう思い悩まなくなり、懐疑しなくなる。懐疑しなくなるから自分の判断、行動を正しいと思えるようになり、その結果急性期の精神的混迷から抜け出すことにより自然治癒力が高まってさらに回復していく。

 このようにして急性期における統合失調症状態を克服するのが正しい克服方法なのである。

               明日に続く

 

 

 

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