2019年5月17日金曜日

統合失調症完全克服マニュアル 5


回復期前期における統合失調症の克服

 

 抗精神薬を継続的に飲み始めると幻聴、幻覚が止み、徐々に患者の精神が安定してくるにしたがって患者は保護室から閉鎖病棟に、閉鎖病棟から開放病棟に移され、そして退院となる。そしてだいたい退院とともに回復期前期が始まる。

 統合失調症を発症した患者の10人に1人は自殺するが、最も患者が自殺する時期が退院から2年以内の回復期前期である。妄想、幻聴、幻覚に悩ませられる統合失調症の陽性症状状態の急性期もつらいが、自殺率の高さから言っても統合失調症の陰性症状状態の回復期前期の方がもっとつらいものであるとは客観的にみても明らかであろう。

 回復期前期をどういう風に過ごせばいいのかというと、「待つことのできる患者は半分治っている」という言葉があるとおり、一般的には時が過ぎるのをひたすら待つことであると言われている。回復期前期、陰性症状状態の時、感情が鈍麻平板化して、自分が精神的に死んでいるように感じられるが、真冬の枯れ木も春が来れば必ず再び芽吹き再生するように、自分の精神も時が来れば必ず復活すると信じることであると言われている。無意識下で徐々に精神を修復していく自然治癒力の力を信じて待つことができた者だけがこの時期を乗り越えられると良心的統合失調症の解説本には書かれている。

 一般論はそうであるが、基本的に一般論からいえば統合失調症は不治の病で治らないとも言われているのであまり一般論はあてにはならないであろう。「待つことのできる患者は半分治っている」という言葉は現在医学的にベターだと思われている理論で、ベストな理論はまだ発表されていないのである。私としてはベストな方法は回復期前期においても総論でも述べた通りただたんに待っているだけではなくきちんと意識的に心の奥底にある執着を捨てて、心の意志化を積極的に解いていくことであると主張する。

 まず退院して最初に必ずやるべきことは何かといえば、自立支援と障害者手帳を取ることである。自立支援と障害者手帳を取ることで過去の健常者としての自分をきっぱりと捨て、つまらないプライドを捨て、障害者として生きていく覚悟をきちんと意識的に持つことが必要であると私は主張する。つまらないプライドを捨て、過去の健常者としての自分に対する執着をきっぱりと捨てることが心の意志化をほどき、自然治癒力を高める最初の第一歩なのである。

  自立支援とは統合失調症の治療のための医療費、薬代の本人負担額が一割負担となる国の医療制度のことである。

  言い忘れたが、100円ショップに行って小さな箱を買い、調剤薬局で作ってもらった朝食後、夕食後、寝る前と分けられている薬の袋を薬を飲んだあと一時的に入れるゴミ箱を服薬忘れ防止のために作ることも極めて重要である。

退院直後、抗精神薬を最大量近く飲みながらかつ陰性症状が最大の時、ほとんどすべての患者は体がものすごく重くだるく感じられ、まとまった思考を持てずぼんやりとした絶望感を感じながら毎日を送ることだろう。睡眠薬で強制的に夜寝ているせいか熟睡感がなく、よって朝になってもリフレッシュした気持ちにならず、心身ともに日々どんどん疲労感が蓄積されていくように感じる。そして単純な足し算、引き算すらできず、新聞を読む集中力もテレビを見る集中力さえない自分を発見して愕然とする。ずっとこのまま治らなかったらどうしよう? 将来、本当にまた働けるようになるのだろうか? 入院時に見た重度精神病患者のように最終的には自分もなるのだろうか? 考えても答えのないこと、意味のないことをぐるぐると頭の中で毎日、毎日考えながら、さらに絶望的な気持ちになっていく。

(統合失調症は治る人もいれば、治らない人もいる。また働けるようになる人もいれば、一生働けない人もいる。最終的に重度認知症を患い、精神病院に閉じ込められて死ぬ前の10年、20年を刑務所よりもずっとつらい環境の中で送る人もいるし、ある日突然寝ている間にあの世に行ってしまう幸運な人もいる。しかし自分がどうなるかは自分に訊いても医者に訊いても分からない。どんな不治の病でも必ず治る人はいるが、治るか治らないかを分ける境目は、誰にもはっきりとしたことはいえないからである。)

 退院から6ヶ月間は、はっきり言って積極的自主的にやるべきことは特に何もない。医者に言われたとおり、週3日くらいデイケアに通い、睡眠と休養を十分取り、毎日1・2時間重い体を引きずるように散歩すること以外何もできないし、実際問題としてやりたくもないだろうし、できないだろうから何もしなくていいのである(有酸素運動としての散歩をすることだけは陰性症状を緩和させ、自然治癒力を高め、質の良い睡眠を取りやすくすることが医学的にも証明さられていることだから、散歩だけはなんとしてもやったほうがいいであろう)。またこの時期における散歩以外の努力と忍耐は禁忌である。散歩以外の努力、忍耐をすると心が再び意志化して再発する可能性が高まるからである。ただ急性期を脱して安定してきている精神を6ヶ月間引き続き再発させずに安定させ続けることだけが基本的に退院から6ヶ月間にすべきことなのである。この期間、毎晩寝る前に、もう二度と目覚めませんように、と神様に祈ってから目を閉じることが日課になる人も多いことだろうが、それは基本的にはいいことである。自殺しようと積極的に思うのではなく、ただもうこれ以上生きたいと思わなくなる期間が回復期前期には絶対必要なのである。その期間があることにより後述するように人生をある意味あきらめて絶望感を克服するゆとりを得ることができるようになるのである。

             明日に続く

 

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